【5ステップ】部下の正しい叱り方!やってはいけない叱り方やタイプ別の方法も解説

「部下を叱るのが苦手で、適切な指導ができていない」
「叱り方を間違えてパワハラと思われるのが心配」
「どうすれば部下のやる気を削がずに改善を促せるの?」
部下の指導で、叱り方に悩んでいる管理職の方は多いでしょう。特に最近は世代間の価値観の違いやパワハラへの意識の高まりから、どこまで厳しく指導すべきか判断に迷いますよね。
そこで本記事では、部下の成長につながる正しい叱り方を5つのステップで解説します。タイプ別・シーン別の効果的な叱り方やNGな叱り方も紹介するため、適切な部下指導を身につけたい方に役立つ内容です。
本記事を読んで、部下との信頼関係を築きながら成長を促せる叱り方を身につけましょう。
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部下への叱り方に関する課題
管理職として働く中で、部下への適切な指導方法に頭を悩ませている方は多いでしょう。現代の職場環境では、従来の指導スタイルが通用しなくなっており、さまざまな課題が浮上しています。
本項では、部下への叱り方に関する課題を解説します。
叱ることを苦手に感じている上司が多い
近年の社会環境の変化により、多くの管理職が部下への注意や指導に対して苦手意識を抱いています。
地域の人間関係の希薄化や学校での厳しい指摘の減少、職場でのハラスメント意識の高まりなどの影響で「厳しく指摘された経験」を持たない世代が管理職になるケースが増加している現状です。
叱られた経験が乏しく、効果的な指導ができない管理職も増えています。
Job総研が実施した調査では、上司から熱意を込めて注意された経験を持つ人は38.6%にとどまり、61.4%の人は経験がないと回答しました。
指導された経験が乏しいまま管理職になった人は、部下への接し方に戸惑いを感じやすく、結果として指導を避ける傾向が見られます。
パワハラと叱ることの線引きが難しい
ハラスメントと叱ることの線引きが難しいと悩む人が多い傾向です。
厚生労働省では、ハラスメントを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と規定しています。
しかし実際の職場では、どこまでが適正な業務指導で、どこからがハラスメントになるのかの判断が困難な場面が多々あります。
部下の成長を願っての厳しい指導が、結果的にハラスメントと受け取られる可能性もあるため、管理職は慎重になりがちです。
叱り方を間違えると起こるリスク
指導の仕方を誤ると、相手にとって大きなストレスや不信感を生み、業務や人間関係に深刻な悪影響を及ぼすリスクがあります。
詳しくは「やってはいけない部下の叱り方4選」で解説しますが、頭ごなしに否定したり、人格を否定するような叱り方をした場合、部下は萎縮し、自主性や積極性を失ってしまいます。その結果、指示に従わなくなる、必要な報告が上がってこないなど、日常業務に支障をきたす恐れがあるでしょう。
それに伴い、業務の質が低下し、挑戦を避ける傾向が強まり、職場全体の生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。これにより成果が上がらなくなり、管理職としての評価や信頼にも悪影響を及ぼしかねません。
部下の成長につながる正しい叱り方5ステップ
本項では、部下の成長につながる正しい叱り方を5つのステップで紹介します。
- 適切な場所とタイミングを選ぶ
- 具体的な事実を伝える
- なぜ問題なのかを説明する
- 改善点を明確に示す
- 期待を伝えて前向きに締めくくる
これらの手順を順番に実践することで、部下の理解を促し、改善につなげられるでしょう。
1.適切な場所とタイミングを選ぶ
効果的な指導では、伝える内容だけでなく「いつ・どこで・どう伝えるか」が重要です。管理職の中には、自分の言いたいことだけを一方的に伝えてしまうケースがありますが、指導の本来の目的は、問題の改善と部下の成長を促すことです。
そのため、相手の尊厳や気持ちに配慮し、冷静に話を聞いてもらえる環境を整えることが重要です。
基本的には、問題が発生した直後に「その場で」伝える方が記憶も新しく、改善につながりやすいとされています。ただし、相手が明らかに忙しかったり、感情的になっていたりする場面では、あえてタイミングをずらす判断も必要です。
2.具体的な事実を伝える
指導の対象を明確にし「何が」問題で「どの部分」を改善する必要があるかを具体的に伝えることが重要です。
会議への遅刻が問題となった場合、遅刻したという事実や事前連絡がなかったという状況など、客観的な出来事を整理して話します。その後、遅刻により会議の進行にどのような影響が生じたかを説明し、相手にも状況を理解してもらうところから始めます。
曖昧な指摘ではなく、具体的な行動や結果に焦点を当てると、部下は問題の本質を把握しやすくなるでしょう。
3.なぜ問題なのかを説明する
「なぜその行動が問題だったのか」「どのような対応を期待していたのか」を明確に伝えることで、指導を受ける側に納得感が生まれ、受け入れられやすくなります。
指導の理由を明確に伝えることで、相手に納得感を与え、一方的な価値観による叱責ではないと理解してもらえるでしょう。これにより、管理職側の認識にズレがあった場合でも、相互理解が深まります。
4.改善点を明確に示す
指導を行う際には、具体的に「どう改善すればよいのか」を示すことが重要です。改善策が曖昧なままだと、部下は何をどう直せばいいのか分からず、結果として同じ問題を繰り返してしまう可能性があります。
「会議前には5分前行動を心がけて」など、望ましい行動を明確に言葉で伝えると、次に何を意識すべきかがはっきりします。
状況に応じて、望ましい対応の実例を示したり、必要であれば追加研修やOJTの実施を提案したりするのも効果的です。
5.期待を伝えて前向きに締めくくる
指導の後には「次回は大丈夫」「この提案は良かった」などと、部下をフォローすることが重要です。
普段通りに声をかけ、落ち込みや気まずい雰囲気を解消させることもポイントになります。
指導によって改善が見られた場合は、積極的に評価を伝えましょう。
部下の叱り方3つのコツ
本項では、部下の叱り方のコツを紹介します。
- 相手の立場と意図を理解してから指導する
- 肯定サンドイッチ法を使う
- ミスなどが起きた原因や解決策を自分で考えてもらう
コツを身につけることで、部下との信頼関係を維持しながら効果的な指導が行えるようになります。
1.相手の立場と意図を理解してから指導する
部下を指導する際は、まずその行動の背景や状況を理解しようとする姿勢が大切です。「なぜその行動を取ったのか」「どんな事情があったのか」を本人に確認せず、頭ごなしに叱ると、信頼関係を損ねてしまうリスクがあります。
行動の理由を聞くことで、部下の判断基準や思考プロセスが見えてきます。それに対して上司として意見を伝えれば、的確なアドバイスにつながり、パワハラなどの誤解も避けやすくなります。
また、本人の立場や気持ちに寄り添った対応は「自分をしっかり見てくれている」「成長を期待されている」と感じてもらえる要素にもなり、指導そのものを受け入れてもらいやすくなります。
2.肯定サンドイッチ法を使う
肯定サンドイッチ法とは、肯定→否定→肯定の順序で叱る手法で、手順は「褒める」→「叱る」→「褒める」の流れで進めます。
褒め言葉や感謝の言葉を挟んでやさしく伝えられるため、部下は叱られた内容を素直に受け入れられて、信頼関係をより強固にできます。
厳しい指摘も、前後に肯定的なメッセージがあることで、部下の自尊心を傷つけずに伝えられるでしょう。
3.ミスなどが起きた原因や解決策を自分で考えてもらう
部下の成長を促すためには、ミスの原因や今後の改善策を上司が一方的に教えるのではなく、本人に考えさせることが重要です。自分で考えた答えには納得感があり、実行への意欲や責任感も高まります。
具体的には「どうすれば同じミスを防げると思う?」「原因はどこにあったと感じる?」「次に活かすには何ができそう?」といった質問を通して、部下の内省を促します。本人が自分の行動と向き合う機会を与えられるでしょう。
本人が考え込んでしまった場合は、いくつかの選択肢を提示することで思考を助けるとより効果的です。
やってはいけない部下の叱り方4選
部下を叱る際には「機嫌で叱る」「人格攻撃」「人前で叱る」「感情をぶつける」などはやってはいけないとされています。
本項では、上記の内容をもとにやってはいけない部下の叱り方を解説します。
1.他の人の前で感情的になって大声で叱る
他人の前で部下を感情的に叱ることは、絶対に避けるべきNG行動です。怒鳴ったり強い言葉を使ったりすると、部下のプライドを傷つけ、恥をかかせることになり、信頼関係が崩れやすいでしょう。
特に、感情的な叱責は、相手の行動を正すどころかモチベーションを下げ、萎縮や反発を引き起こす可能性が高くなります。一度でもそのような対応を取ってしまうと「また怒鳴られるかもしれない」という不安から、報告や相談すらしづらくなることもあるでしょう。
感情を抑え、問題の事実と影響を丁寧に説明すれば、部下も落ち着いて自分の行動を振り返りやすくなります。
2.人格や能力を否定する
「君は本当に使えない」のような個人の人間性を攻撃する叱責は、相手の心を深く傷つけるだけで、業務改善には結びつきません。
個人の存在そのものを否定するような発言で部下が心理的ダメージを受けると、上司への信頼が失われ、今後のアドバイスや指導を素直に聞き入れてもらえなくなる危険性があります。
加えて、個人の人格を攻撃するような叱責方法は、厚生労働省がパワーハラスメントに該当すると明示しており、法的リスクの観点からも絶対に回避すべき行為です。
そのため「能力が足りない」ではなく「今回の資料作成で数値の確認が不十分だった」のように、行動や成果物に着目した指摘を心がけましょう。
3.過去の失敗を蒸し返す
過去のミスを何度も引き合いに出して叱ることは、部下のモチベーションを下げ、反発や不信感を生む原因になります。「また同じことをして」「前にも言ったよね」といった指摘は、成長意欲をくじくだけでなく、信頼関係にも悪影響を及ぼします。
叱る際は、今まさに起きている問題にフォーカスし、過去とは切り離して伝えることが大切です。例えば「今回の◯◯の件について、今後こう改善していこう」と現在と未来に目を向けた話し方を心がけましょう。
4.抽象的な内容で叱る
「仕事が雑だよ」「ちゃんとして」など、抽象的な叱り方は、部下にとって何が問題だったのかが伝わらず、行動の修正につながりません。叱責の効果を高めるには、具体的にどの行動が問題だったのかを明確に伝えることが重要です。
そのため「今回の契約書で金額の記載ミスが3箇所あり、クライアントへの確認作業が発生した」と具体的に伝えることで、何をどう改善すべきかがはっきりします。
【タイプ別】部下の効果的な叱り方
部下と一口に言っても、経験や立場によって叱り方は異なります。本項では、部下のタイプ別の叱り方を解説します。
- 新人・若手社員
- 中堅社員
- ベテラン社員
それぞれの特性を理解し、指導方法を選択することで、部下の成長を促進できるでしょう。
1.新人・若手社員
新人や若手社員は経験が浅く、自信を持ちにくいため、丁寧で前向きな声かけが基本です。叱る前に良かった点を具体的に伝えることで、安心感を与えましょう。
例えば、プレゼンで声が小さかった場合も「資料の構成は良かったよ」と褒めたうえで「もう少し声のボリュームを上げるともっと伝わるね」と改善点を伝えると、素直に受け入れてもらいやすくなります。
2.中堅社員
中堅社員は基本的な業務を自立してこなせるため、役割意識や責任感を刺激する叱り方が効果的です。
例えば、スケジュール管理にミスがあった場合「リーダーとして期待しているからこそ、改善してほしい」と期待を前提に改善を求める伝え方が有効です。
また、細かく詰めすぎると自主性を損なうため、指示よりも方向性や目的を示す形で伝えてみてください。裁量を尊重しつつ、必要なときにはサポートできる距離感を保つことで、安心して業務に取り組めます。
3.ベテラン社員
経験と実績を積んできたベテラン社員には、敬意を持った接し方が基本です。独自の手法や信念を持つ人も多いため、頭ごなしの指摘では反発を招きかねません。
改善提案をする際は、まずこれまでの成果を認めたうえで伝えることが大切です。例えば「田中さんの営業スタイルは成果を上げてきました。その強みを活かしつつ、新しいツールの導入も検討してみませんか」といった表現なら、プライドを守りながら変化を促せます。
「今までの方法も優れているが、さらに良くするために」のように、肯定から入る伝え方を心がけることで、相手も前向きに受け入れやすくなります。
【シーン別】部下への正しい叱り方
本項ではシーン別の部下への正しい叱り方を解説します。
- 同じミスを繰り返す
- 遅刻や欠勤が多い
- 報告・連絡・相談ができない
以下の項で詳しく解説します。
1.同じミスを繰り返す
同じ間違いが繰り返される背景には「指示内容の誤解」「行動への落とし込みができていない」などが挙げられます。
単に注意するだけでは根本的な解決につながらず、本人の理解度や認識のズレを見逃している場合が多い可能性があります。まずは本人に内容を説明してもらい、必要に応じて復唱してもらうことで理解度を確認しましょう。
2.遅刻や欠勤が多い
遅刻や欠勤が続く場合は、理由を丁寧に聞き取り、原因に応じた対応をすることが重要です。一方的に叱るのではなく「なぜ繰り返されるのか」を本人に説明させ、背景を理解しましょう。
体調不良や家庭の事情など、やむを得ない理由がある場合は、柔軟な勤務時間や制度面の見直しを検討することも必要です。
一方で、本人の意識やモラルに原因がある場合は「遅刻や欠勤がなぜ問題なのか」を自分の言葉で説明させると効果的です。
3.報告・連絡・相談ができない
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)ができない部下には、まず「なぜ必要なのか」「どのようにすべきか」を具体的に伝えることが大切です。一方的に叱るのではなく、なぜそれが問題かを理解させ、行動に落とし込む指導を心がけましょう。
原因としては「自己判断で進めてしまう」「報告のタイミングが分からない」「相談しにくい雰囲気がある」などが考えられます。これらを踏まえたうえで「どのような場面で」「誰に」「どのように報告・相談すべきか」を明確に示す必要があります。
部下の叱り方に悩んだらcoachee(コーチー)で相談を
部下を適切に叱るには、感情的にならず、事実に基づいて冷静に伝えることが大切です。場所やタイミングを見極め、改善点を明確に示すことで、相手の納得感を高められます。
本記事で紹介した正しい叱り方を活用すれば、パワハラにならない伝え方や、タイプ別に効果的な接し方が身につきます。
部下の叱り方に悩んでいる管理職の方は多く、叱った後の関係悪化を心配するケースも少なくありません。
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