【目標例あり】部下育成の目標設定方法と人材育成計画のポイント

計画的かつ効果的に部下の成長を促進するためには、目標設定が必要不可欠です。しかし、実際に人材育成を担当すると、目標設定や目標管理に難しさを感じることも多いのではないでしょうか。

この記事では、部下を育成する上で知っておきたい目標設定の方法、目標を達成させるためのポイント、部下の育成計画を成功させるコツをわかりやすく解説します。また、職種別の具体的な目標例も紹介するので、部下の目標を決める際にぜひ参考にしてください。

記事の監修者:高橋 秀誓
coachee株式会社 代表取締役 高橋 秀誓のプロフィール写真

高橋 秀誓
キャリアコンサルタント

coachee株式会社 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
プロティアン認定ファシリテーター
キャリア相談プラットフォーム『coachee(コーチー)』運営者

明治大学卒業後、リテール、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)を経て総合人材サービス会社に勤務。
求人広告、人材紹介、人材派遣、SESにおける、ソリューション提案、事業統括、会社設立等に従事。エグゼクティブ,Web,IT,SI.HRにおけるリクルーティング支援、キャリア形成支援を行う。
相談実績は3500人以上。

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目次

管理職の悩みの半数以上が『部下育成』

部下育成の課題に関する実態調査」では、管理職の62%が部下育成に悩みがあることがわかりました。部下を持つ管理職の半数以上が部下の育成で悩んでいるのです。

部下を育成する上で重要なのは、適切な目標設定です。同調査では、育成の悩みで最も多かった回答が「部下に成長意欲がない」でした。目標設定をしないまま指導をしたり、業務を与えたりしても成果や達成感を得られないため、モチベーションが下がってしまいかねません。目標を立てて達成していくことで、部下の「もっとレベルの高い仕事をしたい」「スキルアップしたい」という意欲が掻き立てられるのです。

また、目標を定めることで、人材育成のためのステップが可視化されます。計画的かつ効率的に部下を育てられるだけでなく、人材育成の進捗管理もしやすくなるでしょう。

部下育成の目標を立てる方法・手順

適切な目標設定を行うことで、効果的に部下の成長を促すことができます。部下の目標を立てる時の手順は、以下のとおりです。

  • 目標を考える前の準備をする
  • 目標項目を設定する
  • 達成基準と期限を決める
  • 目標達成のための計画を立てる

順に解説します。

目標を考える前の準備をする

部下に適切な目標を設定するためには、必要な情報を整理することが大切です。具体的には、以下があげられます。

最終目的を決める会社が求めている人材から最終的に目指す人物像を決める
向上させるべきスキルの優先順位をつけ、まずどの段階まで育成するか決定する
現状を把握する部下の業務への取り組み姿勢や成果、言動からスキルレベルを明確化する
履歴書などで部下の所持資格や経歴を確認する
部下を理解する部下と面談をして今の課題や目指したいこと、仕事に対する考えを聞く

他の社員に部下の印象や仕事ぶりを聞く

最終目的を意識して目標を立てることで、一貫した人材育成ができます。また、部下の現状を理解すると、部下のスキルレベルに合った適切な目標設定がしやすくなります。

目標設定前の準備で特に大切にしたいのは、部下との面談です。会社が求めている人物像だけで目標を考えると一方的な内容になってしまい、目標がノルマ化してしまいかねません。

部下の課題や理想像も聞いて育成に取り入れることで、目標への挑戦が部下自身のキャリア形成・自己実現につながると意識させることができます。部下が「達成したい」と思える目標を設定するためにも、欠かせない準備なのです。

目標項目を設定する

目標設定に必要な情報の整理ができたら、人材育成計画に沿って中期・短期の目標項目を決めます。最も基礎的な目標設定の方法であるベーシック法では、目標項目が以下の4種類に分けられます。

向上・強化業務のスピードや質を上げるために立てる目標
例:資料作成にかかる時間を削減するためにExcelのスキルを上げる
改善・解消業務上の問題や課題を解決・改善するために立てる目標
例:書類作成でミスをしてしまうため、提出する前にダブルチェックを徹底する
維持・継続難易度が高いことを継続するために立てる目標
例:現在の営業成績を維持する
創出・開発新しいことを始める時に立てる目標
例:広報活動の一環としてYouTubeチャンネルを開設する

部下の現状のスキルレベルなどによって、設定するべき目標項目の種類は異なります。しかし、「創出・開発」は他の項目に比べて難易度が高く、挑戦する側にも高度なスキルを要するため、すぐに目標設定しなければならない項目ではありません。

まずは「改善・解消」を達成して、問題なく業務が遂行できるようになった後に「向上・強化」「維持・継続」の目標を立てます。部下の育成が進んで、業務レベルが上がってから「創出・開発」に挑戦する流れがおすすめです。

目標項目を決めたら、目標の内容を決めます。目標の内容は、努力をすれば達成できる難易度のものにした方が部下のモチベーションを上げることができます。

達成基準と期限を決める

目標の内容を決めたら、達すべき数値やなすべき状態を具体的かつ定量的に決めます。とはいえ、すべての目標を数値化できるとは限りません。数値化できない定性的な目標を設定する際は、どういった状態を達成基準とするのか考えましょう。

定量的な目標の例…2ヶ月で10件新規顧客開拓をする
定性的な目標の例…1ヶ月で商品知識を深め、顧客からの質問にすぐ回答できるようにする

また、いつまでに達成するのか期限を設定することで、部下が目標達成のための行動を起こしやすくなります。

目標達成のための計画を立てる

目標達成に必要な行動や行動を起こす頻度、スケジュールなど具体的な計画を立てます。また、使用する目標管理ツールや進捗報告のタイミングも決めておくことで、目標管理がしやすくなるでしょう。

目標があっても、部下は「このままでいいのかな」といった不安を抱えているケースがあります。計画を立てると、やるべきことと自分の成長がわかるので、部下は自信をもって目標に向けた取り組みができるでしょう。

部署別!部下の育成目標の設定例

部署別の具体的な目標設定例と目標設定時のポイントを紹介します。

営業部

営業の場合は、売上や利益などの数値目標をチーム別、個人別で持っているのが一般的です。そのため、業務目標と部下の育成目標に相関性があることが重要となります。

具体的な目標例としては、以下があげられます。

営業部の目標例
3ヶ月以内に成約率を20%上げる
目標達成のための計画
・1日当たりの商談件数を2件増やす
・毎週水曜日に上司または先輩とロープレを行う
・毎週金曜日にすべての営業内容を振り返り、改善点を1つ以上見つける

経理部

経理担当は会社の利益に直接かかわる業務ではありませんが、業務の効率化やミスを極力減らすといったことで会社運営のコストを抑えることができます。そのため、経理部の部下育成の場合、目標はスキルアップがメインになるでしょう。

経理部の目標例
半年以内に、現在の経理業務にかかっている時間を1ヶ月あたり10時間削減する
目標達成のための計画
・6月に簿記2級を取得する
・7月の社内研修に参加して、業務で使用するツールの知識をアップデートする
・休日に30分タイピングの練習をする

人事部

人事部は会社の人材管理を担当しています。経理部と同様、直接的な企業の利益を担うわけではありませんが、企業に利益をもたらす人材の採用・定着や社員の適性に合う配属を行うことで、会社の成長を促します。

目標設定では、会社や社員の抱える課題等を改善・解消する項目や、より働きやすい会社に向上させる項目を意識するのがおすすめです。数値的な目標を決めるのが難しいケースは、「どういう状態を目指すか」という視点で目標設定しましょう。

人事部の目標例
4ヶ月後に行う新入社員研修で、社員の研修満足度を80%以上にする
目標達成のための計画
・1ヶ月後までに過去3年分の研修アンケートのデータを確認し、新入社員研修の改善案を3つ以上提出する
・2ヶ月後までに企業理念、会社の歴史、事業内容など自社のことを学び直して、どんな質問にも答えられるようにする
・1月に開催されるプレゼンテーションセミナーに参加して、わかりやすく説明するスキルを向上させる

マーケティング部

マーケティング部では、Web広告やオウンドメディア、マスメディアなどの媒体を利用して認知または集客を行うので、営業と同様に数値的な目標を設定しやすいでしょう。ただし、目標設定をするうえでは「どれだけ人に宣伝できたか」だけでなく「宣伝したことでどのくらい売り上げが伸びたか」という視点を忘れないことが大切です。

マーケティング部の目標例
1年以内にWeb経由の売上を1.5倍にする
目標達成のための計画
・1ヶ月後までにECサイトの改善案を3つ以上提出する
・毎日SNSを更新して、半年後までにフォロワーを5,000人増やす
・1ヶ月あたり20本の新着記事をアップし、オウンドメディアでの集客を半年で前年同月より10%増加させる

目標を達成させる3つのコツ

部下に目標を達成させるコツは、部下が意欲的に目標達成の行動を起こし続けるようサポートすることです。具体的には、以下3つがあります。

  • 目標達成時に得られるものをイメージさせる
  • 数値化できない成長にも気づいてほめる
  • 定期的な振り返りをする

一つずつ説明します。

目標達成時に得られるものをイメージさせる

部下がモチベーション高く取り組むためには、目標を達成することで習得できるスキルや得られる成果などを目標設定時に伝えることが効果的です。

目標達成は、仕事上で役立つだけでなく、部下自身の成長やキャリア形成につながることがイメージできれば、意欲的にアクションを起こすでしょう。

数値化できない成長にも気づいてほめる

目標管理を行ううえでは、数値化できない成長や変化にも気づくことが大切です。評価する際は定量的な目標達成だけでなく、そのプロセスや部下の言動で成長した点にも目を向けましょう。

顧客から部下を評価する声があった、部下が自主的に業務を工夫したなど、定性的な成果も褒めることで、部下との信頼関係が深まり、部下のモチベーションも上がりやすくなるのです。

定期的な振り返りをする

目標管理を行う上では、定期的な振り返りも重要です。目標管理シートなどを活用して進捗状況を確認しつつ、フィードバックを丁寧に行いましょう。

フィードバックの方法としては、まず良い点を伝えた後、部下にうまくいかなかったことや気付きを聞きます。上司が感じている改善点を言うよりも先に部下に考えさせることで、自発性を伸ばすことができます。

部下の意見や考えを聞いて必要なアドバイスを行ったうえで、部下が気づいていない改善点がある場合は伝えましょう。

状況によっては、より部下に合った目標にアップデートすることも必要です。

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部下の育成を成功させる3つのポイント

部下を効果的に育成する上で心がけたいことを以下3つ紹介します。

  • 失敗できる環境づくりをする
  • 部下を理解する姿勢を持つ
  • フォローは適度に行う

順に解説します。

失敗できる環境づくりをする

部下の育成では、失敗できる環境づくりを心がけましょう。失敗は必ずしも悪ではなく成長のステップです。部下が失敗した時に長時間責めたり、感情的に叱ったりしても本人のやる気を低下させるだけでしょう。部下に注意をする時は、フォローをしつつ失敗から学んだことを本人に言語化させることが効果的です。

また、部下から「挑戦したい業務がある」と言われたら任せてみるのも良いでしょう。部下に失敗する権利を与えることは、自主性や積極性を育てることにつながります。

部下を理解する姿勢を持つ

部下を理解しようとすることも、人材育成のポイントです。部下の考え方や仕事への姿勢、行動の癖などがわかると、より効果的な育成方法が見えてくることがあります。

そのため、部下が意見を出した時はしっかりと耳を傾けることが大切です。たとえ自分の考えと異なる点があるとしても、否定するのは避けましょう。「なぜそう思うのか」「自分はこう思うがどうか」などの質問をして業務のすり合わせをしながら理解を深めましょう。

フォローは適度に行う

部下が目標に向けた行動をスタートさせたら、適度にフォローすることも重要です。そのため、部下が困っている時には躊躇せずに声をかけましょう。部下は「こんな些細なことを聞いてもいいのかな」と質問できずにいることもあるので、特に最初は気にかけます。

とはいえ、口出ししすぎないことも心にとめておきましょう。部下の進め方が自分と違っていても、大きく目的から外れなければ見守ります。そうすることで、部下の主体性を伸ばすだけでなく、自分のやり方よりも効率的な方法が見つかることもあります。

目標を適切に管理して部下を育成しよう

本記事では、部下の目標設定の方法と部下に目標を達成させるコツ、部下育成を円滑に進めるポイント、部署別の具体的な目標例を紹介しました。効果的な目標設定を行い、部下を適度にサポートしつつ目標管理をすることで、部下の成長を加速させることが可能です。

とはいえ、実際に部下の育成がはじまると、部下への接し方や目標管理方法など悩みが生じることは少なくありません。そういった場合は、一人で悩みを抱えず第三者に相談しましょう。

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