家族経営の会社は「やめとけ」なのか|社長の家族がいる会社で残るか動くかを決める3つの物差し

家族経営の会社は「やめとけ」なのか|社長の家族がいる会社で残るか動くかを決める3つの物差し

社長の家族が経営に関わっている会社で働いていると、説明のない決定や、理由のわからない待遇の差に出くわすことがあります。検索すれば「家族経営はやめとけ」「頭おかしい」といった言葉が並びますが、そこで止まってしまうと、自分の会社がとくにひどいのか、どこの企業もこんなものなのかは分からないままです。

この記事では、家族経営をひとまとめに否定するのではなく、公私混同が起きている会社と、同族でも仕組みが残っている会社を分けて考えます。そのうえで、残るか動くかを自分で決めるための3つの物差しと、いつまで様子を見るかという期限の決め方を整理します。読み終えたときに、「この職場で起きている問題のうち、どこまでが構造の話で、どこからがこの会社だけの事情なのか」を切り分けられる状態を目指します。

目次

家族経営が「やめとけ」と言われる理由|うんざりする場面に共通するもの

家族経営に対する否定的な評価は、個々のエピソードの派手さから生まれているように見えて、実際には共通した一点に行き着きます。社員が消耗しているのは、一族の人柄そのものではなく、決定の理由が開示されない状態が続くことです。

「頭おかしい」と感じる場面は、たいてい決定の説明がないとき

進めていた仕事が朝礼のひとことで止まる、稟議を通した案件が理由の説明なく覆る、人事がある日突然伝えられる。こうした場面が続くと、社員の側は「何がおかしいのか」を言語化する前に疲れていきます。

ここで起きているのは、判断の内容が間違っているという問題ではありません。判断の根拠にアクセスできないという問題です。根拠が見えない環境では、社員は次に何が起きるかを予測できず、仕事の計画そのものが立てられなくなります。

「息子に甘い」が問題になるのは、甘さそのものではなく基準の二重化

後継者とされる息子や娘が優遇されること自体は、どの企業にも起こりうる話です。問題になるのは、同じ失敗に対して処分が変わる、同じ成果に対して評価が変わる、といった基準が二重に存在する状態です。

基準が二重になると、社員は自分の努力がどの基準で測られているのか分からなくなります。「頑張っても意味がない」と感じるとき、その背景にあるのは能力の不足ではなく、測る物差しが複数あることへの疲れであることが少なくありません。

やばいと感じたとき、起きているのは関係の問題ではなく構造の問題

特定の上司とそりが合わない、という話であれば、異動や時間の経過で変わる余地があります。しかし家族経営でつらさが長期化しやすいのは、会社の所有と経営が同じ一族に握られていて、その配置が動かないからです。

※ 人間関係そのものに消耗している場合は、構造の話と切り分けたほうが整理しやすくなります。職場の人間関係がつらいときの考え方もあわせて参考にしてください。

家族経営は2種類に分かれる|公私混同型と、仕組みが残っている同族型

「家族経営はやめとけ」という言い切りが扱いづらいのは、日本の会社の大半が同族会社だという事実と衝突するからです。一括りに否定すると、読んだ人の選択肢がほとんど消えてしまいます。ここでは、同じ家族経営でも性質が分かれることを前提に、2つの型に名前をつけて見分けます。

職場で起きていることを3つの物差しで順にふるい分け、構造の問題とこの会社固有の事情に分ける図
3つの物差しを順に通すと、「家族経営だから起きていること」と「この会社だから起きていること」が分かれる

公私混同型に出るサイン

公私混同型では、家庭の都合が会社の意思決定にそのまま流れ込みます。次のようなサインが重なって出ます。

  • 会議の結論が、その場にいなかった家族のひとことで翌日覆る
  • 役割や肩書きの根拠が説明されず、担当範囲が人によって伸び縮みする
  • 社内の揉めごとが、業務上の論点ではなく親子・夫婦の関係に左右される
  • 経費や備品の線引きが、一族とそれ以外で明らかに違う

仕組みが残っている同族型に出るサイン

一方で、株主や役員が一族で固まっていても、日々の運営は手順に沿って回っている会社もあります。こちらは次のようなサインが出ます。

  • 決裁のルートが文書化されていて、誰が見ても同じ順番で進む
  • 一族以外が部門の責任者を務めていて、その人の判断が覆されない
  • 採用や評価の基準が社内に共有され、変更時には理由が説明される
  • 家族の話題と業務の話題が、会議の場で混ざらない

注意したいのは、ひとつの会社がどちらか一方に完全に属するとは限らない点です。製造や経理の現場は手順で回っているのに、人事と昇給の決定だけが家庭の事情で動く、という混在はよく起こります。見るべきなのは会社全体の印象ではなく、自分の働き方に直接ひびく領域がどちらの型で動いているかです。

「ホワイトな家族経営」が存在する以上、一括りの判断は使えない

この2つは、外から見える特徴(社名に創業家の名字が入っている、面接に一族が出てくる)ではほとんど区別できません。区別できるのは、入ってから見える決め方の部分だけです。だからこそ、すでに中にいる人のほうが正確に判定できます。次の章からの3つの物差しは、その判定を手順にしたものです。

物差し①|決め方が人に紐づいているか、手順に紐づいているか

1つ目の物差しは、意思決定が人に属しているか、手順に属しているかを見るものです。ここが手順側にあるなら、一族が経営していても仕事は積み上がります。

確かめ方:似た案件が二度出たときに、同じ結論になるか

過去半年を振り返り、条件がほぼ同じ案件が2回以上あった場面を探します。そのときの結論が一致していれば、判断は手順に紐づいています。結論が分かれていて、分かれた理由が「誰が言い出したか」で説明できてしまうなら、判断は人に紐づいています。

判定の目安は「反対意見が一度でも通ったことがあるか」

もうひとつ簡単な目安があります。一族以外の社員が出した反対意見が、過去に一度でも採用されたことがあるかどうかです。前例がひとつもない場合、その会社で提案の質を上げても結果は変わりにくく、経験を積んでも手応えが返ってきません。

この物差しがとくに効くのは、「自分の伝え方が悪いのではないか」と感じているときです。伝え方で結果が変わる会社なら、過去に一度は反対意見が通っているはずです。前例がないという事実は、問題の所在が自分の能力ではなく意思決定の仕組みの側にあることを示します。

物差し②|自分の仕事の評価が、一族以外にも届いているか

2つ目の物差しは、自分の成果がどこまで広がっているかを見るものです。家族経営の会社では、評価の経路が社長ひとりに集中しがちで、そこが詰まると仕事の価値が社内にも社外にも残りません。

青空の下に建つ小規模な事務所の建物

確かめ方:自分の成果を説明できる人が、社内に何人いるか

直近1年でやり遂げた仕事を3つ挙げ、それぞれについて「中身を知っていて、第三者に説明できる人」を社内から挙げてみます。全部の答えが社長や特定の一族ひとりに集中するなら、評価の経路は1本しかありません。

経路が1本の職場では、その人との関係が揺らいだ瞬間に、これまでの実績の説明役がいなくなります。これは努力の量とは無関係に起きるリスクです。

社外に持ち出せる形の経験が積めているか

もうひとつ見ておきたいのが、担当業務が社外でも通じる言葉で説明できるかどうかです。「社長の指示を形にする」だけで一年が終わっているなら、職務経歴として書ける内容が薄くなります。逆に、数字・範囲・関わった人数で語れる仕事が残っているなら、動く選択肢の幅は保たれています。

物差し③|給料と待遇の決まり方を、どこまで確かめられるか

3つ目の物差しは、自分の給料がどう決まっているかを、どこまで自分で確かめられるかという点です。ここでは金額の多寡ではなく、決まり方の見え方だけを見ます。

確かめられることと、確かめられないことを先に分ける

社員の立場で確かめられるのは、昇給の時期と頻度、評価面談の有無、等級や手当の説明があるかどうか、といった運用の部分です。一方、一族がどれだけ受け取っているかは、社員からは見えないのが通常です。見えないものを推測し続けると消耗するので、先に線を引きます。

  1. 昇給が何を根拠に決まるのか、社内の文書で説明されているか
  2. 直近2年の昇給について、理由の説明を受けたことがあるか
  3. 質問したときに、答えが返ってくるか・話題を変えられるか

説明が返ってこないこと自体が、ひとつの答えになる

3つ目が重要です。金額に納得できるかどうかより、問いが受け止められるかどうかのほうが、その会社の性質をよく表します。質問が感情的な反発として扱われる職場では、今後も待遇の根拠は共有されないと考えておいたほうが現実的です。

※ 昇給そのものが止まっている場合は、原因が自分側にあるのか会社の構造側にあるのかを切り分けると考えやすくなります。給料が上がらないときの切り分け方も参考になります。

「見抜けなかった自分が悪い」と考える必要はない

3つの物差しを当ててみて、結果が思わしくなかったとき、多くの人が最初に向かうのは自分への批判です。応募前に気づけたはずだ、面接で見抜くべきだった、という考え方です。ここは一度切り離しておきます。

閉じられた一枚のドア

入社前に判別できることには、もともと限界がある

前章までに挙げた判定材料は、どれも「似た案件が二度出たとき」「直近2年の昇給」のように、時間の経過がなければ集まらないものです。数回の面接で集められる情報ではありません。見抜けなかったのは注意力の問題ではなく、判定に必要な材料が外から見えないという性質によるものです。

家族経営であること自体は、避けるべき条件ではない

同族で経営されている企業は国内に数多くあり、意思決定の速さや、長期の視点で投資できることをメリットとして挙げる人もいます。デメリットだけを並べて会社の形そのものを避けようとすると、応募先が極端に狭まります。問題は形ではなく運用である、という立て付けに戻したほうが、次の選択がしやすくなります。

残るか動くかを決める期限の作り方|いつまで様子を見るか

物差しを当てたあとに残るのは、「で、いつ決めるのか」という問題です。期限を決めずに様子を見ると、判断を先送りしたまま年単位で時間が過ぎます。次の3ステップで期限を作ります。

  1. 変化が起きたと言える条件を、観察できる形で1つだけ決める
  2. その条件を確かめる期限を、3か月から6か月の範囲で置く
  3. 期限が来たときに取る行動を、先に2通り書いておく

以下で詳しく解説します。

ステップ1:変化の条件を、観察できる形で1つだけ決める

「社長の態度が改まる」のような条件は観察できません。「提案した案件が、理由の説明つきで採否が返ってくる」「評価面談が実施される」のように、起きたかどうかを後から確認できる出来事に置き換えます。条件は1つに絞ったほうが判定がぶれません。

ステップ2:期限は3か月から6か月に置く

短すぎると偶然の揺れを変化と見誤り、長すぎると判断そのものを忘れます。組織の運用が変わったかどうかを見るには、四半期がひとつの区切りになります。人事や予算の節目をまたぐ期間に置くと、変化があるなら表に出やすくなります。

ステップ3:期限が来たときの行動を、先に2通り書いておく

条件が満たされた場合と、満たされなかった場合の行動を、期限が来る前に書いておきます。重要なのは、「残る」も選択肢として明示しておくことです。残ると決めた場合にも、評価の経路を社長以外にも広げる、社外で通じる実績の書き方を整える、といった準備は進められます。

※ 人がどんどん抜けていく状況が並行して起きている場合は、個人の判断とは別の動きが始まっている可能性があります。連鎖退職が止まらない職場の見方もあわせて確認しておくと、期限の置き方が変わります。

期限を決めておく利点は、その日が来るまで余計な判断をしなくて済むことにあります。毎日の出来事に反応して気持ちが揺れる状態から、決めた日にまとめて確認する状態へ移るだけで、消耗はかなり減ります。期限までの間は、記録を取ることだけを仕事の一部として続けておくと、判定の材料がそろいます。

\「この会社がおかしいのか」を一人で抱えこむ前に/

家族経営の職場の悩みを、社外の人と整理するという選択肢

3つの物差しのうち、一人で判定しづらいのは「どの程度なら普通なのか」という基準の部分です。家族経営の会社は社内に比較対象がなく、同僚に聞いても同じ環境しか知らないため、答え合わせができません。

キャリア相談のプラットフォームであるcoacheeでは、さまざまな業種・規模の企業を見てきたコーチに、単発・低価格から相談できます。転職すべきかどうかの結論を出してもらう場ではなく、「家族経営だから起きていること」と「この会社だから起きていること」を分けて確かめる壁打ちの場として使えます。

※ 理不尽な出来事が単発で続いているという感覚のほうが強い場合は、仕事の理不尽への向き合い方のように、出来事単位で整理する切り口のほうが合うこともあります。

まとめ|家族経営は形ではなく運用で判断する

家族経営の会社で残るか動くかを決めるときは、次の3点を押さえておくと判断がぶれません。

  • 問題は同族であることそのものではなく、公私混同が運用に入り込んでいるかどうか
  • 判定に使うのは、決め方・評価の経路・待遇の決まり方という3つの物差し
  • 観察できる条件と3〜6か月の期限を先に決め、「残る」も選択肢として明示しておく

「やめとけ」という言葉に自分の状況を預けてしまうと、判断の根拠が自分の手元に残りません。見えている事実を分けて並べ直すところから始めてみてください。

\比較対象が社内にないなら、社外の視点を一度だけ借りてみる/

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