仕事を教えてもらえないのは当たり前?放置される状況の3分類と、ミスの責任の線の引き方

仕事を教えてもらえないのは当たり前?放置される状況の3分類と、ミスの責任の線の引き方

入社してしばらく経つのに、仕事の進め方を教わらないまま席に座っている。質問すれば答えは返ってくるけれど、聞かなければ何も始まらない。そんな状態が続くと、「自分の聞き方が悪いのだろうか」と考えるようになります。

検索すると「仕事を教えてもらえないのは当たり前」という言葉が並び、対処法として挙がるのは質問の仕方を工夫する、感謝を伝える、低姿勢で接する——といった、どれも自分の振る舞いを変える話ばかりです。

けれど、振る舞いを変えて解ける状況と、そうでない状況があります。この記事では、教えてもらえない状況を3つに分ける見方、教わっていない期間に残しておく記録、教わらずに任された仕事でミスが出たときの線の引き方、そして続けるか場所を変えるかを決める物差しまでを順番に整理します。

目次

「仕事を教えてもらえないのは当たり前」と言われたときに確かめること

「当たり前」という言葉は、2つのまったく違う意味で使われています。混ぜたまま受け取ると、自分がどちらの状況にいるのか分からなくなります。

  • 観察としての「当たり前」:そういう職場が実際に多い、という事実の話
  • 規範としての「当たり前」:教わらないのが望ましい、だから求めるな、という主張

前者は、そういうものだと知っておけば対処のしようがあります。後者は、求めること自体をやめさせる言い方です。

言われた言葉がどちらなのかを一度分けてみると、受け取り方が変わります。「自分のときもそうだった」と言われた場合、それは前者であることが多く、相手に悪意があるわけではありません。

やっかいなのは、前者のつもりで言われた言葉を、後者として受け取ってしまうときです。事実の共有だったものが、求めてはいけないという命令に聞こえる。そうなると、聞くこと自体にためらいが生まれ、分からない範囲がさらに広がっていきます。

※ ただし、前者であっても、業務が回らない状態が続いているなら放っておく理由にはなりません。

教えてもらえない状況は3つに分かれる

同じ「教えてもらえない」でも、起きていることは一つではありません。打つ手が変わるので、まずどれなのかを見分けます。

教えてもらえない状況を手順がない・担当が決まっていない・情報から外されているの3つに分けて並べた図
同じ見え方でも、止まっている場所が違う

①教える手順そのものが職場にない

マニュアルがなく、業務の順番が誰かの頭のなかにしかない状態です。教える側も、何をどこまで渡せばいいのかを把握していません。

この場合、聞けば教えてもらえます。ただし聞かないかぎり出てこないので、こちらが何を知らないのかを知らないあいだは、ずっと止まったままになります。

見分け方としては、同じ質問を別の人にしたときに答えが食い違うかどうかが手がかりになります。食い違うなら、職場として決まった手順が存在していません。

②教える担当が決まっていない

手順はあるけれど、誰が面倒を見るのかが決まっていない状態です。全員が「他の人が見ているだろう」と思っていると、結果として誰も見ていないことになります。

人手が足りていない職場で起きやすく、悪意はありません。けれど放置されている側からは、①と区別がつきません。

②は、窓口を一つ決めてもらうだけで大きく動くことがあります。「この業務について分からないときは、どなたに伺うのがよいですか」と確認する。たったこれだけで、宙に浮いていた役割が誰かのものになります。

③意図的に情報から外されている

ほかの人には共有されている内容が、自分にだけ回ってこない状態です。会議に呼ばれない、更新されたファイルの場所を知らされない、といった形で表れます。

①②と③を分ける手がかりは、同じ立場の人と比べて差があるかどうかです。同期や近い時期に入った人が同じように困っているなら①か②、自分だけが知らないことが続くなら③の可能性があります。

自分の聞き方を直す前に見ておくこと

質問の仕方を整える、要点を絞る、まとめて聞く。こうした工夫は役に立ちますが、効く範囲があります。

聞き方の工夫で動くのは①と②の一部

①の職場では、こちらから具体的に聞けば答えが返ってきます。②の職場では、「この件は誰に聞くのがよいですか」と窓口を確認するところから始めると進みます。

どちらも、聞き方というより「何を聞くか」を整える作業です。態度や低姿勢の話ではありません。

食事に誘う、普段から雑談を増やすといった助言もよく見かけますが、効き目は相手との相性に左右されます。先に手をつけるなら、関係づくりより範囲の確認のほうが外れが少なくなります。

③には聞き方の工夫が届かない

情報から外されている状態では、丁寧に聞いても返ってくる量は変わりません。ここで「まだ聞き方が足りないのだ」と考え続けると、消耗だけが積み上がります。

③だと見立てた場合は、個人のやりとりではなく、記録と相談先のほうに力を使うほうが現実的です。

なお、①②③は固定されたものではありません。人手不足で②になっていた職場が、担当者が替わって①に戻ることもあります。一度の見立てで決めつけず、ひと月ごとに見直すくらいがちょうどよい距離感です。

「教わっていない」は能力の話ではない

教わっていないことができないのは、能力の問題ではなく、情報が渡っていないという事実です。この2つを混ぜないでください。

職場で感じる居心地の悪さが業務の話なのか、それ以外なのかを分けたいときは、会社に馴染めないと感じる原因と判断基準も合わせて見ておくと整理しやすくなります。

\①②③のどれなのか、話しながら見分けたいときに/

教わっていない期間に残しておく記録

放置されている時間は、何も残らないまま過ぎていきます。手元に残すものがあると、あとで効いてきます。手順は次の3つです。

何も書かれていないホワイトボード
  1. いつ・誰に・何を聞いたかを1行で残す
  2. 教わった範囲と、教わっていない範囲を分けて書く
  3. 自分で調べて進めた部分に印をつける

いつ・誰に・何を聞いたかを1行で残す

手帳でもメモアプリでも構いません。「10/27 Aさんに請求書の締め日を確認、過去ファイルを見るよう言われた」。この程度の粒度で十分です。

同じことを何度も聞いているのか、聞いても返ってこないのかが、2週間もすると見えてきます。

書くこと自体に時間をかける必要はありません。1日の終わりに30秒、その日に詰まった場面だけを残します。毎日は埋まらなくても構わず、空白の日が続いていること自体も情報になります。

教わった範囲と教わっていない範囲を分けて書く

担当業務を箇条書きにして、説明を受けたものに丸、受けていないものに三角を付けます。三角の数がそのまま、いま抱えているリスクの量です。

この一覧は、上司との面談で状況を伝えるときにもそのまま使えます。感情ではなく範囲の話にできるので、受け取る側も動きやすくなります。

「教えてもらえていません」と伝えると、相手は責められたと受け取ることがあります。「この5つは説明を受けていて、こちらの3つはまだです」と範囲で伝えれば、残りをどう渡すかという段取りの話に移せます。

記録は提出するためではなく、自分の判断のため

誰かに突きつけるために書くのではありません。自分が置かれている状況を、記憶ではなく記録で見るためです。

記憶だけで判断すると、調子の良い日と悪い日で見え方が揺れます。記録があれば、3か月前と比べて状況が動いたのかどうかを、気分と切り離して確かめられます。

教わっていない仕事でミスが出たときの、線の引き方

教わらないまま任された業務でミスが出る。この局面がいちばん消耗します。謝りながら、どこまでが自分の責任なのか分からなくなるからです。

事実だけを先に並べる

何が起きたか、いつ起きたか、どう直すか。この3つだけを先に伝えます。原因の話はそのあとです。

順番を逆にして「教わっていなかったので」から入ると、どれだけ正しくても言い訳として受け取られます。直す段取りを先に出すほうが、話が通ります。

再発防止を、手順の側に戻す

再発防止として「気をつけます」と言うと、次も同じことが起きます。そうではなく、「この作業の手順を書き起こして共有しておきます」と提案してみてください。

自分が書く形になりますが、書いた時点で、その業務は口伝えではなくなります。次に入る人も同じところで止まらずに済み、あなた自身も確認先が手元に残ります。

書き起こしたものを渡すときは、完成度を上げすぎないほうがうまくいきます。抜けがある状態で出すと、周囲が足りない部分を埋めてくれることがあり、結果として知らなかった手順が表に出てきます。

抱え込まずに、範囲を先に申告する

ミスが起きる前に、「この部分は説明を受けていないので、確認しながら進めます」と一言添えておく。これだけで、起きたときの扱いが変わります。

先に言うのは、逃げではありません。進め方の共有です。言いづらければ、口頭ではなくメールやチャットで一行添えるだけでも記録として残ります。

※ 業務の量そのものが過大になっている場合は、教わる以前の問題として、持ち分の見直しを別に相談してください。

続けるか、場所を変えるかを決める物差し

状況が動かないまま時間が経つと、どこかで判断が必要になります。期限と条件を決めておくと、毎日迷わずに済みます。

建物の中の階段と踊り場

中途採用で「即戦力だから」と言われている場合

経験のある分野であっても、その会社のやり方、システム、取引先の事情は教わらないと分かりません。ここは経験で埋まる部分ではなく、引き継ぎの範囲です。

「即戦力」は、業務の中身を自力で発明してほしいという意味ではないはずです。社内固有の情報が渡っていないなら、経験年数とは別の話として伝えて構いません。

中途で入った人ほど、聞くことをためらいがちです。前の職場では分かっていたことを尋ねるのが、できない人に見えるのではないかと感じるためです。けれど会社ごとの決めごとは、前職の経験では埋まりません。

期限を決めて様子を見る

上司に状況を伝えてから1か月、3か月といった区切りを決めます。区切りの時点で、三角の数が減っているかどうかを見ます。

減っていれば、時間が解決する種類の問題でした。まったく減っていないなら、待っても同じ結果になる見込みが高くなります。

区切りを決めておく利点は、やめどきが分かることだけではありません。期限までは腹をくくって続けられる、という面のほうが大きいかもしれません。終わりが見えていない我慢と、3か月と決めた我慢では、同じ時間でも疲れ方が違います。

動くと決めたときに持っていけるもの

教わらない環境で自力で進めた経験は、職務経歴として書ける材料になります。手順を書き起こした、確認の仕組みを作った、といった動きは、どの職場でも通じます。

自分から動いたつもりがないのに周囲から受け身だと見られている、という引っかかりがある場合は、「指示待ち人間」と言われたときの測り直し方も合わせて読んでおくと、評価と事実のずれを分けやすくなります。

一人で見分けがつかないときは、第三者と並べてみる

①②③のどれなのかは、その職場しか知らない状態では判断が難しいところです。ほかを知らないと、どこまでが普通でどこからがそうでないのかの基準が持てません。

coacheeは、キャリアに特化したスキルシェア型のプラットフォームです。転職や就職だけでなく、いまの職場での進め方の悩みも、専門のコーチに単発で相談できます。継続の契約を結ばずに、1回だけ使うこともできます。

記録した「三角の一覧」を見せながら話すと、どこまでが職場の事情で、どこからが動いたほうがよい範囲なのかの見当がつきやすくなります。実際のやりとりの様子は、coachee利用者のインタビューやメンタルコーチングの記事から見られます。

まとめ

仕事を教えてもらえない状況で持ち帰りたいのは、次の3点です。

  1. 手順がない/担当が決まっていない/外されている、の3つに分ける
  2. 聞き方の工夫が効くのは前の2つまで。3つ目には届かない
  3. 教わった範囲と教わっていない範囲を書き分け、記録で判断する

教わっていないことができないのは、聞き方の問題でも能力の問題でもありません。この仕事を誰がどこまで渡すのかを決めた人が、その職場にいなかっただけのことがあります。

その前提に立てると、自分を責める時間が減り、記録と期限という手を動かせる作業に移れます。放置されていた時間が、そのまま次の判断の材料に変わっていきます。

\いまの状況がどれなのか、一度整理してみませんか/

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