有給が取りづらいのはおかしい?自分の職場が普通かどうかを確かめる手順と、しわ寄せの考え方

有給が取りづらいのはおかしい?自分の職場が普通かどうかを確かめる手順と、しわ寄せの考え方

有給が取りづらい職場にいると、申請の前に長い逡巡が入ります。誰も使っていない、上司が休まない、休んだ分の仕事は結局自分に戻ってくる。制度としては存在するのに、使える空気がない。この状態を前にして出てくるのが「おかしいのは自分なのだろうか」という問いです。

この記事では、違法かどうかの判定ではなく、自分の職場が普通の範囲かを確かめる手順を扱います。あわせて、有給を取ると誰かにしわ寄せが行くという感覚の正体、申請の進め方、そしていつまで様子を見るかという期限の決め方まで整理します。

目次

有給が取りづらい理由の1位は「職場の空気」|制度はあるのに使えない状態

取りづらさの出どころは、規則よりも空気にあります。調査でもこの点は裏づけられています。

有給休暇を取得しづらい理由として最も多く挙げられたのは「職場の空気」でした。

出典:ビッグローブ「有給休暇に関する意識調査」(2017年)

取得自由とされていても、申請の前に空気を読む段階がある

規則の上では自由に取得できる職場でも、実際の手順には「周囲の様子を見る」という段階が挟まっています。この段階は文書化されていないため、どう振る舞うのが正しいのかが誰にも示されません。

結果として、申請できない理由が本人の気の使いすぎに見えてしまいます。手順が書かれていない作業を任されている状態だと捉えると、見え方が変わります。

おかしいのは自分なのか会社なのか、職場の中では決まらない

取りづらさが普通の範囲かどうかは、いまの職場の人と話しても判定できません。全員が同じ空気の中にいるため、比べる基準がその空気の内側にしかないからです。

※ この記事では、職場の外にある数字と手順を基準として使います。そのうえで、自分の職場がどのあたりに位置するのかを確かめていきます。

自分の職場が普通かどうかを確かめる3つの手順

判定に使うのは、感覚ではなく3つの観察です。どれも1日で終わります。順番はなく、同時に確認してかまいません。

1枚の天板を3本の脚が支え、右の1本だけが短く天板に届いていない状態で、確かめられていない項目を示した図
短い脚は、本人の遠慮ではなく未確認の印
  1. 付与日数と、自分が実際に取得した日数を数える
  2. 申請の経路が決まっているかを確かめる
  3. 同じ部署の人の取得状況を見る

手順1:付与日数と自分の取得日数を数える

給与明細や勤怠システムで、今年度の付与日数と取得済みの日数を確認します。ここで比べる相手は同僚ではなく、全国の平均値です。

労働者1人あたりの付与日数は平均18.1日、取得日数は平均12.1日、取得率は66.9%でした(令和6年の状況)。

出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(2025年)

自分の取得率がこの水準に近いなら、取りづらさは感覚の問題に寄っています。半分を大きく下回っているなら、職場の側に取りづらさの原因があると考える材料になります。

手順2:申請の経路が決まっているかを確かめる

次に見るのは手続きの明確さです。申請書の様式があるか、提出先が決まっているか、何日前までに出すのかが決まっているか。この3点が決まっていれば、取得は作業として進められます。

決まっていない職場では、取得のたびに交渉が発生します。交渉の相手も場面も毎回変わるため、慣れることがありません。取りづらさの正体が、人間関係ではなく手続きの欠落であるケースはよくあります。

手順3:同じ部署の人の取得状況を見る

3つめは、同じ部署の人が年に何日休んでいるかです。全員が数日しか取っていないなら、職場全体の問題です。取れている人がいるなら、その人がどの時期にどう申請しているかを観察します。

入社1年目や新入社員で、周囲の誰も使っていない場合は特に判定が難しくなります。前例が見えないため、何が普通かを知る手がかりが職場にないからです。この場合は手順1の数字が、唯一の外部の基準になります。

有給を取ると誰かにしわ寄せが行く、という負担の所在

取りづらさの中でも重いのが、「自分が休むと同僚に負担がかかる」という感覚です。この感覚は思い込みではなく、人手が足りていない職場では事実として起きます。問題は、その負担を誰が引き受けるべきかという点が曖昧なままになっていることです。

人員を決めているのは本人ではない

1人が休むと業務が止まる体制は、誰かが休むことを想定していない人員配置から生まれます。配置を決めているのは、休もうとしている本人ではありません。

にもかかわらず、しわ寄せの責任は申請する人に寄っていきます。これは決定した人と負担を感じる人がずれている状態です。ずれていることに気づくと、申請の重さが少し下がります。

しわ寄せが見えているのは、休もうとした本人だけ

人員の不足は、誰かが休もうとした瞬間に初めて目に見えます。普段は全員が出勤しているため、不足は数字に現れません。つまり、取りづらさを体感しているのは申請を考えた人だけで、体制を決める側には届いていないことが多くあります。

人手不足を理由に休みにくい職場で、しわ寄せを受ける側の視点は、「働かないおじさん」にムカつくのは正当な反応でも扱っています。残るかどうかを決める基準として読めます。

負担を設計する人がいない職場で起きること

誰が休んだときに誰が代わるのかを決めている職場では、取得は調整の問題になります。決めていない職場では、取得は個人の気合いの問題になります。後者では、休める人は押しの強い人、休めない人は気を使う人という分かれ方をします。

※ この分かれ方は本人の性格の優劣ではなく、代替の仕組みがないことの結果です。自分が休めないのは遠慮しすぎだと結論づける前に、代わりが決まっているかどうかを確かめてみてください。

確かめ方は、自分が1日休んだときに誰がどの業務を引き取るのかを書き出してみることです。引き取り手の名前が書ける業務と、空欄になる業務に分かれます。空欄のほうが多いなら、休みにくさの原因は空気ではなく分担の未決定にあります。

この書き出しは、上司に相談するときの材料にもなります。「休みづらい」という訴えは受け取りにくいものですが、「この3業務に引き取り手が決まっていない」という形にすると、調整すべき対象がはっきりします。

\休めないのは自分のせいなのか、30分で切り分けてみる/

有給が取りづらい職場で、実際に申請するときの進め方

手順と負担の所在を押さえたうえで、実際に申請する場面の進め方を見ていきます。空気を変えようとするのではなく、作業として処理するのが要点です。

白い木製の3段の引き出し
  1. 理由の欄は短く書いて済ませる
  2. 繁忙期を外し、先に日付だけ押さえる
  3. 断られたら、取れる日を聞き返す

理由を書く欄は、短く書いて済ませる

申請書に理由の欄があると、説明の内容で可否が決まるように感じます。実際には、長く書くほど検討の余地が生まれ、やりとりが増えます。「私用」のように短く書くほうが、手続きとして流れやすくなります。

※ 理由を詳しく聞かれた場面では、答えたうえで日付の確定に話を戻すのが実務的です。理由の説明が目的ではなく、日程を決めることが目的だからです。

繁忙期を外し、先に日付だけ押さえる

取りづらい職場では、取得の可否は時期でほぼ決まります。月初や月末の締め、決算期、担当業務の山場を外した日を選ぶだけで、断られる確率は下がります。

そのうえで、予定の中身が決まる前に日付だけ先に申請する方法が有効です。空いている日を押さえておけば、周囲の予定が埋まってから動く不利を避けられます。

断られたときは、取れる日を聞き返す

希望日が通らなかったとき、そこで引き下がると次の申請が重くなります。「では、いつなら取れますか」と日付を尋ねる形に切り替えると、やりとりが交渉から調整に変わります。

この質問に相手が答えられない職場は、そもそも代替の仕組みを持っていません。答えが返ってこなかったという事実そのものが、職場の状態を示す情報になります。

有給が取りづらい状態を、いつまで様子を見るか

取りづらさの解説は原因と対処法で終わることが多く、期限の話がほとんど出てきません。期限がないまま我慢すると、状況が変わっていないのに諦めだけが進みます。付与のサイクルに合わせて3つの区切りで見るのが扱いやすい方法です。

  • 次の付与日まで:取得日数が増えるかを見る
  • 半年:申請の経路が決まるかを見る
  • 1年:付与された日数のうち何日使えたかを見る

次の付与日まで:取得日数が増えるかを見る期間

まずは次の付与日までを一区切りにします。この間に1日でも取得できたなら、取得は不可能ではないという実績が残ります。実績が1つあるかどうかで、次の申請の重さは大きく変わります。

1日も取れなかった場合は、手順2で見た経路の不在が原因である可能性が高くなります。気の使い方を変えるより、経路を決めてもらう相談に切り替える段階です。

半年:申請の経路が決まるかを見る期間

半年あれば、人の入れ替わりや体制の見直しが一度は入ります。その機会に申請の様式や提出先が決まったなら、職場は変わる余地を持っています。

半年たっても経路が決まらず、取得のたびに交渉が続くなら、この職場では取りづらさが常態であると見てよい段階です。ここで判断するのは辞めるかどうかではなく、取りづらさを前提に働き方を組むかどうかです。

1年:付与された日数のうち何日使えたかを見る期間

1年が経ったら、付与された日数と使えた日数を並べます。手順1の平均値と比べて差が大きいままなら、取りづらさは1年を通した職場の特徴として定着しています。

使えなかった日数は、働く条件の一部です。給与や残業と同じ並びで、条件として評価する段階に移ります。

有給の取りづらさが、続けるか動くかの判断材料になるとき

有給の取りづらさは、単独では転職の理由になりにくい項目です。ただ他の条件と合わせると、全体像が見えてきます。

白い窓付き封筒が置かれている様子

年間休日と残業時間と合わせて見る

休める日数は、年間休日と有給の取得日数の合計で決まります。年間休日が少ない職場で有給も取れないなら、休みの総量がかなり小さくなっている計算です。年間休日の水準の見方は、年間休日105日は「やめとけ」なのかで内訳から整理しています。

残業時間も同じ並びで見ます。時間の長さ自体より、予測できるかどうかが負担を決めるという見方は、残業20時間がきついのは甘え?で扱っています。

取りづらさが評価に結びついているなら、条件の問題として扱う

休んだあとに任される仕事が減った、評価の説明で休みに触れられた。こうした変化があるなら、取りづらさは空気の問題から待遇の問題に移っています。

※ この段階では、職場の中で改善を待つ理由が弱くなります。休める総量を条件の1つとして並べ、他の選択肢と比べる作業に移るほうが前に進みます。

比べるときは、求人票の年間休日と有給の取得実績を2つ並べて見ます。年間休日が多くても取得実績が公表されていない職場では、いまと同じ状態になる余地が残ります。面談の場で取得日数の平均を尋ねておくと、入ってからの差が小さくなります。

普通かどうかを一人で決められないときの相談先としてのcoachee

数字と手順で確かめても、「この職場の取りづらさは許容範囲なのか」という線引きは残ります。線を引くには、複数の職場を見ている人の感覚が役に立ちます。

単発で使えるので、動くかどうかを決める前に試せる

coacheeはキャリアに特化したスキルシェア型のサービスで、1,000円台からの単発相談を選べます。転職の紹介を前提にしていないため、「いまの職場に残る前提で、休みの取り方を整理したい」という使い方もできます。

公的な無料窓口との使い分けは、仕事の悩みは誰に相談する?で比較しています。労働条件そのものを争う話なら、公的窓口のほうが向きます。

同じ状況から動いた人の話を読んでから選ぶ

休みづらさを抱えたままキャリアを考え直した過程は、孤独な在宅勤務とパワハラの狭間で──転職に悩んだ私が、自分らしいキャリアを見つけた道のりで当事者の言葉として読めます。

疲れが抜けない状態が続いている場合は、メンタルコーチングを受ける方法やメリットは?も選択肢になります。回復を先にするか、条件の整理を先にするかで向く相手が変わります。

まとめ|有給の取りづらさは、外の数字に当てて測れる

有給が取りづらいとき、おかしいのは自分かという問いは職場の中では解けません。要点は3つです。

  • 付与日数と取得日数、申請の経路、同じ部署の取得状況の3つで職場の位置を測る
  • しわ寄せは人員を決めた側の設計の結果で、申請する人の遠慮の問題ではない
  • 次の付与日・半年・1年で期限を切り、使えなかった日数を働く条件として評価する

取りづらさを抱えたまま続ける道も、休める職場に移る道も、どちらも選べます。決める前に、自分の職場の位置を外の基準に一度当ててみてください。

\休める総量を、条件として整理してみる/

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